平成19年度実績報告


研究拠点形成実績の概要

21世紀には,産業構造,社会構造に大きな変革をもたらす基盤技術として,ナノテクノロジーの発展が期待されている.これに応えるために,1) 基礎研究としてナノ機械科学(機械分野におけるナノ理工学)を推進し,2) 機械基盤技術としてナノ領域の加工・制御・計測・運動技術を融合して,体系的なマイクロナノメカトロニクスを構築し,3) さらに高度情報社会においてインフラストラクチャとなる三つのシステム(情報機械,情報知能化ロボット,生命情報医療)を提供できる研究拠点を形成する.本研究拠点では,研究発展段階を縦軸とし,専門分野別を横軸とするマトリックスの節点に,各事業推進者を配置するとともに,それぞれの段階ごと分野ごとに,サブリーダを配置したマトリックス構造の研究組織を構築し,下記の事業を実施した.

1) 若手研究者育成のためのプログラムとして,ティーチングアシスタント,リサーチアソシエートの採用(23名)による若手研究者の支援,ポスドクの採用(3名)による研究体制の強化,新展開プロジェクトの公募による研究支援(17件),海外派遣事業(延べ25名)および国内派遣事業(延べ79名)等を実施し,これらに補助金の多くを投入した.
2) 平成19年10月3日に,学部学生を対象に名古屋大学において拠点リーダーを含む主要メンバー5名が本COEの拠点活動,アクティビティを理解させるための第14回シンポジウムを開催した(参加者135名).
3) 平成19年11月12日〜11月14日に名古屋大学においてThe 13th Symposium "Micro- and Nano-Mechatronics for Information-based Society" をInt. Symposium on Micro-Nano Mechatronics and Human Science と共同開催した.COE若手研究者にポスター発表を義務付け,英語での発表および海外研究者とのディスカッションの機会を与えた.
4) 平成19年11月14日に,名古屋大学において拠点リーダーを含む主要メンバー5名が,本COEの5年間の研究成果に関する報告会を実施した.
5) 平成19年12月13日に, 平成19年度の新展開プロジェクト採択者が自主的に第15回シンポジウムを企画し,プロジェクトの成果発表とディスカッションを実施した.
6) 若手研究者育成に力を注いだ成果として,1名のCOE若手研究者が申請した科学研究費補助金(若手研究B)に採択された.
7) 平成20年1月18日に米国UCLAにて,本COEメンバーが中心となって,若手研究者・大学院学生も参加して,第2回UCLA-Nagoya University Symposium on MEMS, Nano and Bio Technologyを開催した.
8) 若手研究者を対象としたCOE社会連携セミナーを5回開催し,産学連携の強化を含む情報発信基地としての施策を実施した.
9) 本拠点の活動状況を紹介するための平成19年度の研究活動報告書を作成した.
10) 本拠点の5年間(2003-2007)の成果概要集(英語版)を作成した.
11) 月例の運営委員会(5名)を開催し,研究の進捗状況の管理運営に務めた.


研究拠点形成に係る具体的な成果

1)本事業に関連して,世界的な研究拠点に向けて改善・整備等されたこと
マイクロ・ナノメカトロ二クスに関連した基礎研究,基盤技術,システム化技術の三階層別を横軸とし,情報機械システム,情報知能化ロボットシステム,生命情報医療システムの三プロジェクトを縦軸とするマトリックス構造を組織して研究者の有機的連携を図った.若手研究者を育成するための競争的環境を実現し,国際化および自主性を涵養した.さらに,組織体としての存在感を徹底するために,国際会議形式のシンポジウムの継続的開催,最終報告会や学部生向けのシンポジウムの開催,UCLAでのシンポジウムの開催,平成19年度の研究活動報告書および成果概要集(英語版)の作成などの施策を実施した.

2)研究等によって得られた新たな知見
<システム化技術>
1.電子顕微鏡下でのナノマニピュレーション技術を駆使し, カーボンナノチューブをその場加工・3次元アセンブリー,ナノセンサ及びアクチュエータデバイスを製作し,その性能を評価した.自律分散システムでの大域的秩序の獲得手法を提案し, シミュレーションとロボットを用いた実験により有効性を評価した.また,マルチロコモーションロボット制御において,センサにより環境認識を行い,自律的に移動モードを制御する方法を考案した.
2.生田が概念提案した光駆動ナノロボットによる生細胞の遠隔操作と力学特性のリアルタイム計測に成功.再生医療デバイスとしてポリマ薄膜を用いた能動カテーテルと,細胞蛋白の分離回収化学ICを開発した.
3.両持ち梁を振動子とする音叉を力センサとし,固有振動数の変化を検出してプローブに働く垂直力を測定する方法を開発した.摺動時のプローブ試料間の隙間変動1nm以下での高感度力検出(10nNオーダ)を達成した.
<基盤技術>
1.単結晶シリコンの破壊靱性値と破壊モードが脆性から非脆性に遷移する温度は,厚さが数ミクロン以下の構造体では100℃以下であることを発見し,非脆性破断面で転位の増殖をはじめて観察した.
2.新しい放物線振動切削加工法と新機構の高効率マイクロミキサーを提案し,それぞれの実現可能性を示した.また,進行波を利用する新しい非接触流体軸受に関して,解析モデルを構築することで,流体膜内の状態を明らかにした.
3.人の動作支援を目的に,生体の力制御メカニズムの解明と生体の動作に適合する運動支援機器の設計についての研究を行った.人は動作環境に依存して力の知覚特性が変化し,それは環境との接触力の運動制御特性にも現れることがわかった.
4.CNx表面の相対湿度を1%以下に減少させるように加熱することで,0.05以下の低摩擦が大気中でも得られることが明らかになった.また,カーボンナノチューブ膜の界面強度の測定法が提案された.
5.ハイブリッドシステムとして人間行動を捉えることで,人間行動の高次レベルでの数理モデル化と理解を可能とした.また,確率的離散情報処理を用いて大規模系に対する分散型故障診断の枠組みを構築した.
<基礎研究:ナノ機械科学>
1.高クヌッセン数流れに適用可能な感圧分子膜の色素の選定とマイクロデバイスへの適用,共鳴多光子イオン化法による分子線の回転非平衡現象の解析,気体分子の回転エネルギーモデルを導入したモンテカルロ直接シミュレーション手法の開発を行った.
2.転位の自己エネルギーが多結晶金属の初期降伏応力に及ぼす影響を解析的に評価し,サブミクロン〜数ミクロンの粒径範囲で実験結果とのよい一致をいくつかの金属に対して得た.
3.スパッタリングによるナノ結晶銅薄膜では,粒径が50nm程度まではホールペッチ関係が成立する.また,塑性変形後の粒内微視ひずみは極めて小さく,微細粒材では初期状態まで回復することを明らかにした.
4.噴射液iの微粒化を引き起こす元になる擾乱が液糸先端の収縮によって作られる表面張力波であることを実証し,自己分断機構を提案した.普遍的で自己完結的な新しい微粒化理論の構築に成功した.
5.骨格筋の粘弾性,異方性,能動的収縮能とその損傷を考慮した力学モデルを開発した.その結果,筋の引張/破断特性のひずみ速度および筋活性度依存性と損傷発展の様子を精度良く再現できた.




All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Nagoya University