平成18年度実績報告


研究拠点形成実績の概要

21世紀には,産業構造,社会構造に大きな変革をもたらす基盤技術として,ナノテクノロジーの発展が期待されている.これに応えるために, 基礎研究としてナノ機械科学(機械分野におけるナノ理工学)を推進し, 機械基盤技術としてナノ領域の加工・制御・計測・運動技術を融合して,体系的なマイクロナノメカトロニクスを構築し, さらに高度情報社会においてインフラストラクチャとなる三つのシステム(情報機械,情報知能化ロボット,生命情報医療)を提供できる研究拠点を形成する.本研究拠点では,研究発展段階を縦軸とし,専門分野別を横軸とするマトリックスの節点に,各事業推進者を配置するとともに,それぞれの段階ごと分野ごとに,サブリーダを配置したマトリックス構造の研究組織を構築し,下記の事業を実施した.

1) 若手研究者育成のためのプログラムとして,ティーチングアシスタント,リサーチアソシエートの採用(27名)による若手研究者の支援,ポスドクの採用(4名)による研究体制の強化,新展開プロジェクトの公募による研究支援(10件),海外派遣事業(17名)および国内派遣事業(86名)等を実施し,これらに補助金の多くを投入した.
2) マイクロ・ナノ構造体を製作するためのドライエッチング装置およびそれらを計測するためのプローブ顕微鏡を購入して,ナノ領域の加工,制御,計測,運動への適用技術を確立した.
3) 平成18年11月6日〜11月8日に名古屋大学においてThe 11th Symposium "Micro- and Nano-Mechatronics for Information-based Society" をInt. Symposium on Micro-Nano Mechatronics and Human Science と共同開催した.COE若手研究者にポスター発表を義務付け,英語での発表および海外研究者とのディスカッションの機会を与えた.
4) 平成19年3月12日に, 平成18年度の新展開プロジェクト採択者が自主的に第12回シンポジウムを企画し,プロジェクトの成果発表とディスカッションを実施した.
5) 若手研究者育成に力を注いだ成果として,2名のCOE若手研究者(リサーチアソシエート:後期課程の学生)が申請した科学研究費補助金(若手研究B)に採択された.
6) 平成18年3月7〜8日に,ポスドクおよび後期課程の学生を中心としたCOE若手研究者が企画・運営を行う7大学合同シンポジウムが広島大学にて開催され,自らの研究成果について発表を行うのみならず,相互の研究内容を広く知ることによって,今後の研究に有益な議論の場をもつことができた.
7) 若手研究者を対象としたCOE社会連携セミナーを12回開催し,産学連携の強化を含む情報発信基地としての施策を実施した.
8) 本拠点の活動状況を紹介するための平成17-18年度の研究活動報告書を作成した.
9) 月例の運営委員会(7名)を開催し,研究の進捗状況の管理運営に務めた.


研究拠点形成に係る具体的な成果

1)本事業に関連して、世界的な研究拠点に向けて改善・整備等されたこと
マイクロ・ナノメカトロニクスに関連した基礎研究,基盤技術,システム化技術の三階層別を横軸とし,情報機械システム,情報知能化ロボットシステム,生命情報医療システムの三プロジェクトを縦軸とするマトリックス構造を組織して研究者の有機的連携を図った.若手研究者を育成するための競争的環境を実現し,国際化および自主性を涵養した.さらに,組織体としての存在感を徹底するために,国際会議形式のシンポジウムの継続的開催,平成17-18年度の研究活動報告書作成,ホームページの充実など,新規の施策を実施した.

2)研究等によって得られた新たな知見
<システム化技術>
1. 単分子層厚さの極性潤滑剤と無極性潤滑剤の摩擦特性の経時変化を測定して,配列構造の形成過程との相関を明らかにした.また,段差境界流動およびUV照射流動の比較により,無極性潤滑にもUV照射が有効であること見出した.さらに,単分子膜厚レベルの伸び量と凝着力を定量化した.
2. 電子顕微鏡下でのナノマニピュレーション技術を駆使し,カーボンナノチューブをその場加工・3次元アセンブリー及び応用評価した.自律分散システムでの大域的秩序の獲得手法を提案し,シミュレーションにより有効性を評価した.また,二足歩行制御における三次元倒立振子モデルに基づく安定な動歩行を実現した.
3. すべての工程で微量試料を使える蛋白分析用化学ICチップ群を開発し,実験検証も行った.人工毛細血管デバイス,光駆動ナノマシンに関しても,主要基盤技術を構築できた.
<基盤技術>
1. シリコン結晶異方性エッチングにおいてこれまで効果が無視されてきたエッチング液中の微量金属陽イオンのうち,特に銅イオンがエッチング反応を抑制することが,実験と第1原理計算から明らかになった.
2. 楕円振動切削加工法によってゲルマニウムやフッ化カルシウムの単結晶材料の超精密延性モード加工を達成し,紫外・赤外領域の光学素子を実現し得る可能性を示した.
3. 双音叉共振器を用いた鉛直力測定法の原理確認に成功し,ファイバプローブ法と組み合わせることにより摺動時の分子層潤滑膜の剪断力・鉛直力同時測定が可能であることを示した.また,プローブ陽極酸化を用いて形成した表面ナノ構造により,分子層潤滑膜の分布制御の可能性を示した.
<基礎研究:ナノ機械科学>
1. 表面から数10nmの極表面層から内部の100nmから数 mの領域の内部応力の分布を高精度に測定を可能にし,それにより薄膜疲労損傷を検出した.疲労き裂発生の結晶学的条件をナノオーダーの観察より提案した.分子動力学によりナノスケール部材の破壊条件を解析することに成功した.
2. 高クヌッセン数流れに適用可能な感圧分子膜の色素の選定および計測原理の考察,レーザー誘起蛍光法と感圧塗料を用いたリニアエアロスパイクノズルにおける側壁効果の解明,REMPIによる面−分子干渉実験の準備を行った.
3. 転位の自己エネルギーを考慮して結晶粒微細化効果を解析し,サブ m〜数 mの結晶粒範囲での降伏応力の粒径依存性の予測に成功した.また,分子動力学法による結晶粒の形態変化のシミュレーションも行った.
4. 乱流微粒化における液糸の分断過程を模擬する微小重力実験結果に基づいて,従来の微粒化理論を塗り替える新しい概念「液糸は,先端の収縮によって生じる表面張力波が関与して自然に分断し続ける」を創造し,数値シミュレーションによって検証した.
5. 骨格筋のマイクロ構造要素である筋束について,力学特性の活性状態及びひずみ速度依存性を実験的に検討した.筋組織の損傷発展の異方性,粘弾性,能動的収縮特性を記述する構成式を定式化し,記述精度を検討した.
6. ナノ領域でのマニピュレーションをめざして,受動関節を有する冗長マニピュレータと弾性接触部を有するグリッパのためのマニピュレータ設計法と制御法,新しい触覚センサを提案し,ナノ領域での器用な物体ハンドリングの可能性を検証した.
7. SiC分解法により生成したCNT配向膜の界面強度並びに摩擦に及ぼすCNT長さの影響を明らかにし,マクロな摩擦材としての可能性を検討した.その結果,摩擦材の設計指針として有用な界面のせん断強度が長さに依らず約4.2 GPaである事が明らかになった.
8.本年度では事象駆動型システムに対して,ベイジアンネットワークと時間付マルコフモデルに基づいた分散型診断手法を提案した.提案手法により,診断の精度と計算量のトレードオフを調整することが可能となり,大規模なシステムに対する分散型診断手法の枠組みが構築できた.




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