平成17年度実績報告


研究拠点形成実績の概要

21世紀には,産業構造,社会構造に大きな変革をもたらす基盤技術として,ナノテクノロジーの発展が期待されている.これに応えるために,1) 基礎研究としてナノ機械科学(機械分野におけるナノ理工学)を推進し,2) 機械基盤技術としてナノ領域の加工・制御・計測・運動技術を融合して,体系的なマイクロナノメカトロニクスを構築し,3) さらに高度情報社会においてインフラストラクチャとなる三つのシステム(情報機械,情報知能化ロボット,生命情報医療)を提供できる研究拠点を形成する.本研究拠点では,研究発展段階を縦軸とし,専門分野別を横軸とするマトリックスの節点に,各事業推進者を配置するとともに,それぞれの段階ごと分野ごとに,サブリーダを配置したマトリックス構造の研究組織を構築し,下記の事業を実施した.

1) 若手研究者育成のためのプログラムとして,ティーチングアシスタント,リサーチアソシエートの採用(35名)による若手研究者の支援,ポスドクの採用(4名)による研究体制の強化,新展開プロジェクトの公募による研究支援(11件),海外派遣事業(13名)および国内派遣事業(132名)等を実施し,これらに補助金の多くを投入した.
2) マイクロ・ナノ構造体を観測するための三次元形状評価装置を購入して,ナノ領域の加工,制御,計測,運動への適用技術を確立した.
3) 平成17年10月12日に,本拠点の人材育成の趣旨を学生に徹底させるために,機械工学の基礎を習得した学部3年生を対象として,本拠点のリーダーおよびサブリーダー7名によるマイクロナノメカトロニクスに関する第9回シンポジウム「システム化技術とナノ機械科学」を開催した.
4) 平成17年11月7日〜11月9日に名古屋市工業研究所においてThe Eighth Symposium "Micro- and Nano-Mechatronics for Information-based Society" をInt. Symposium on Micro-Nano Mechatronics and Human Science と共同開催した.COE若手研究者にポスター発表を義務付け,英語での発表および海外研究者とのディスカッションの機会を与えた.
5) 平成18年2月28日に, 平成17年度の新展開プロジェクト採択者が自主的に第10回シンポジウムを企画し,プロジェクトの成果発表とディスカッションを実施した.
6) 名古屋大学上海フォーラム(平成17年11月11日)に参加し,本拠点を紹介するとともに,学術交流を実施した.
7) 平成18年3月8日に,本拠点の学生が中心となって企画・運営して,名古屋大学にて21COE7大学拠点(学生)合同シンポジウムを開催した.
8) 若手研究者を対象としたCOE社会連携セミナーを4回開催し,産学連携の強化を含む情報発信基地としての施策を実施した.
9) 国内外に本拠点の活動状況を紹介するための和文・英文の小冊子を作成した.
10) 月例の運営委員会(7名)を開催し,研究の進捗状況の管理運営に務めた.


研究拠点形成に係る具体的な成果

1)本事業に関連して、世界的な研究拠点に向けて改善・整備等されたこと
マイクロ・ナノメカトロ二クスに関連した基礎研究,基盤技術,システム化技術の三階層別を横軸とし,情報機械システム,情報知能化ロボットシステム,生命情報医療システムの三プロジェクトを縦軸とするマトリックス構造を組織して研究者の有機的連携を図った.若手研究者を育成するための競争的環境を実現し,国際化および自主性を涵養した.さらに,組織体としての存在感を徹底するために,国際会議形式のシンポジウムの継続的開催,和文・英文の小冊子の作製,ホームページの充実など,新規の施策を実施した.

2)研究等によって得られた新たな知見
<システム化技術>
1. 10 nm以下のすきまを介した相対運動系を実現するためのトライボ表面として,紫外線照射による化学的テクスチャの形成条件と形成メカニズムを解明し,記録媒体および記録媒体製造法として特許出願した.また,ナノ領域におけるPFPE系潤滑剤の減耗修復特性の特異性を解明した.高感度剪断力測定法により,nm厚さのPFPE系潤滑剤の特性を比較評価し,分子構造に依存したナノ閉じ込め作用のメカニズムを解明した.また,表面ナノ構造とナノ潤滑膜の相互作用の制御,ナノ構造に依存した安定性の評価の研究を進めた.
2. 電子顕微鏡下でのナノマニピュレーション技術を駆使し,カーボンナノチューブをその場加工・応用評価した.自立分散システムでの大域的秩序の獲得手法を提案し,有効性を評価した.また,二足歩行制御における三次元倒立振子モデルに基づく動歩行を実現した.また,微小物体の関節操作技術を確立し,単一細胞操作と限定空間での局所反応を実現する超微細作業システムを構築した.In Vitro患者全身動脈モデルを構築し,医療技術評価機能を備える血管内手術シミュレータを実現した.
3. 化学ICのバイオ医療への適用領域を飛躍的に拡大する新技術を開発した.世界で初めて気体と物質交換機能を持つ薄膜製3次元マイクロ流路の作製技術を開発し,生体適合性と生分解性の付与にも成功した.
<基盤技術>
1. 厚さ数ミクロンのシリコン単結晶を室温から500℃までの環境で引張り試験した結果,80℃を境に破壊形態が変化し破壊靭性値が高温側で増大することが判った.構造の微小化による延性の発現と考えられる.
2. 楕円振動切削加工法によるタングステン合金製金型の超精密加工(粗さ40 nm Rz)を達成し,ガラスレンズのコーティングレス成形を実現し得ることを確認した.
3. 磁気記録試験装置用ヘッド位置決め機構の構造系と制御系の設計について研究を行なった.制御性能に配慮して機構の形状最適設計を行なった結果,より性能の高い位置決め装置を設計することができた.
<基礎研究:ナノ機械科学>
1. 繊維配向した多結晶薄膜および薄膜構造体に対して,表面から2nmから数10?mの領域のひずみおよび応力分布を測定する手法を開発し,薄膜の変形・熱サイクル下での応力と半価幅のその場測定に成功した.また,構造体における疲労初期の微小き裂の発生および進展条件を提案した.
2. 高クヌッセン数流れに適用可能な感圧分子膜の開発,超音速自由分子流における非ボルツマン回転エネルギー分布の実験的解明,レーザー誘起蛍光法と感圧塗料による複合計測手法の提案,面−分子干渉実験装置の構築を行った.
3. すべりこう配を考慮した非局所結晶塑性理論のための均質化法の構築と有限要素離散化を行い,金属単結晶と多結晶体の塑性変形の寸法依存性を示した.
4. 微小重力実験と数値シミュレーションに基づいて液体の微粒化で表面張力波が果たす役割を調べた結果,液体の分断が次の液体の分断を引き起こす不安定波を作ることを突き止め,その機構を物理的に明らかにした.
5. 骨格筋のマイクロ構造要素である筋束の力学特性を実験的に検討した.筋マイクロ構造と損傷を考慮した骨格筋力学特性の表現を検討した.マイクロ損傷を考慮した皮質骨構成式を有限要素解析に組込み,足関節傷害の高精度な再現を可能にした.
6. 時間遅れを有するネットワーク結合システムについて,サブシステム間の結合関係により定まるラプラシアン行列を元に,全サブシステムの軌道が有界かつ同期する十分条件を導出した.
7. カーボン系の材料であるCNx薄膜とステンレス鋼球の大気中の摩擦において,CNx膜に 負の直流電圧を印加することで摩擦と摩耗を低減できることを示した.具体的には, 湿度30%の条件下で,CNx膜に-100を印加することで摩擦係数と摩耗率(比摩耗量)は ともに1/2となった.




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