平成16年度実績報告


研究拠点形成実績の概要

21世紀には,産業構造,社会構造に大きな変革をもたらす基盤技術として,ナノテクノロジーの発展が期待されている.これに応えるために,1) 基礎研究としてナノ機械科学(機械分野におけるナノ理工学)を推進し,2) 機械基盤技術としてナノ領域の加工・制御・計測・運動技術を融合して,体系的なマイクロナノメカトロニクスを構築し,3) さらに高度情報社会においてインフラストラクチャとなる三つのシステム(情報機械,情報知能化ロボット,生命情報医療)を提供できる研究拠点を形成する.本研究拠点では,研究発展段階を縦軸とし,専門分野別を横軸とするマトリックスの節点に,各事業推進者を配置するとともに,それぞれの段階ごと分野ごとに,サブリーダを配置したマトリックス構造の研究組織を構築し,下記の事業を実施した.

1)若手研究者育成のためのプログラムとして,ティーチングアシスタント,リサーチアソシエートの採用(32名)による若手研究者の支援,ポスドクの採用(4名)による研究体制の強化,新展開プロジェクトの公募による研究支援(10件),海外派遣事業(20名)および国内派遣事業(63名)等を実施し,これらに補助金の約半分を投入した.
2) マイクロ・ナノ構造体を観測するための透過型電子顕微鏡を購入して,ナノ領域の加工,制御,計測,運動への適用技術を立ち上げた.
3) 事業推進担当者の研究概要に関する講演として、第2回(平成16年6月9日,7名が講演),第3回シンポジウム(平成16年7月7日,6名が講演)を実施した.
4) 平成16年10月31日〜11月3日に名古屋市工業研究所において、Int. Symposium on Micro/Nano Mechatronics and Human Science と共同して、The Fourth Symposium "Micro- and Nano-Mechatronics for Information-based Society" を開催した.COE若手研究者にポスター発表を義務付け,英語での発表および海外研究者とのディスカッションの機会を与えた.
6) 平成16年12月27日に, 平成15年度の新展開プロジェクト採択者が自主的に第5回シンポジウムを企画し,採択からほぼ1年経過したプロジェクトの成果発表とディスカッションを実施した.17年2月28日には平成16年度の新展開プロジェクト採択者が第6回シンポジウムを企画・実施した.
7) 平成17年3月8日に,本拠点で得られた研究成果の紹介,およびCOE拠点形成の関連専攻である名古屋大学工学研究科機械・航空系全専攻のメンバーの研究紹介を,第7回シンポジウム「名大機械・航空テクノフロンティア」として実施し,拠点専攻と産業界との連携の一層の推進を図った.
8) 平成17年1月14日に官民からなる外部の評価委員3名による外部評価を受け,今後の運営に反映させた.
9) 若手研究者を対象としたCOE社会連携セミナーを10回開催し,産学連携の強化を含む情報発信基地としての施策を実施した.
10)月例の運営委員会(7名)を開催し,研究の進捗状況の管理運営に務めた.
11) 本COEプログラムによる教育・研究拠点をさらに強化するために,平成16年度にマイクロシステム工学専攻と機械系専攻をマイクロ・ナノシステム工学専攻と機械理工学専攻に再編成した.


研究拠点形成に係る具体的な成果

1)本事業に関連して、世界的な研究拠点に向けて改善・整備等されたこと
マイクロ・ナノメカトロ二クスに関連した基礎研究,基盤技術,システム化技術の三階層別を横軸とし,情報機械システム,情報知能化ロボットシステム,生命情報医療システムの三プロジェクトを縦軸とするマトリックス構造を組織して研究者の有機的連携を図った.若手研究者を育成するための競争的環境を実現し,国際化および自主性を涵養した.

2)研究等によって得られた新たな知見
<システム化技術>
1. 10 nm以下のすきまを介した相対運動系を実現するためのトライボ表面として,表面に化学的テクスチャを形成するための装置を改善して,膜形成条件の定量的な評価を可能とするとともに,化学的テクスチャの形成メカニズムの可視化に成功し,形成条件を最適化するための有力なツールを確保した.また,開発した新規な測定法により,分子潤滑膜の動的特性を比較評価し,分子潤滑剤の分子構造と動的特性との相関関係を有為に測定できることを確認した.
2. 超微細作業システムに関して研究し、微小物体の複数操作技術を確立し、単一細胞操作と限定空間における局所反応が可能となった。また、テーラーメードで高精度な三次元透明人体モデルの製作技術の基礎を築いた。
3. 走査型・透過型両電子顕微鏡下でのナノマニピュレーション環境を構築し、マルチロコモーションロボットの運動制御によるダイナミックな動作を実現し、自己組織化システムにおける同期現象を獲得した.
4. 化学ICチップがポンプを内蔵した無細胞蛋白「合成系」と細胞の分解、「分析系」の両者に応用可能であることを実証した。

<基盤技術>
1. 差分型エリプソメトリ法を応用して,白色光源を用いて光学系を最適化することにより,ナノ分子膜の段差状境界からの表面流動を膜厚さとしてÅの精度で測定できる方法を開発した.また,表面流動の分子シミュレーションプログラムを開発して,末端に極性基を有する潤滑剤の表面モフォロジー特性の評価を可能とした.
2. 化学的結晶異方性エッチングの研究において、シリコン(111)上の原子段差の安定性がマクロ的なエッチング速度の異方性を支配すること、また、その異方性が容易に入れ替わることを突き止めた。
3. MEMS技術を用いて以下の各種応用デバイスを提案・開発した。能動駆動型触覚センサ(単一素子構造で複数の物理量計測が可能) 経皮剤マイクロニードル マイクロ磁性微粒子を用いた小型生化学分析デバイス。
4. 楕円振動切削加工法を適用して超硬合金の超精密微細溝加工を試み、脆性破壊の見られない良好な仕上げ面(粗さ40 nm Rz)が得られることを確認した。

<基礎研究:ナノ機械科学>
1. 高感度剪断力測定法について、プローブたわみ測定系を最適化することにより最小検出限界10pNオーダという高感度化を実現した。本法を用いた粘弾性特性により、nm厚さの超薄膜潤滑膜がバルク膜と異なる特異な粘弾性特性を示すことを明らかにした。
2. ナノチューブ加工探針作製法を確立し、高アスペクト比を有するナノメートルスケール穴加工を実現した。また、励振による薄膜形成時の残留応力制御法を確立し、そのメカニズムを明らかにした。
3. 繊維配向を有する多結晶体薄膜に対するX線応力測定法を提案し,表面から数10nmの極表面層の応力分布を含めて高精度の測定が可能であることを示した。また、微細粒多結晶の疲労き裂の発生過程を、AFMおよびEBSDを用いてマイクロ・ナノスケールで定量計測することに成功した。
4. ぜい性薄膜の破壊をマイクロき裂の発生の観点から捉え、マイクロき裂の発生と巨視的変形・破壊挙動との相互関係をもとに、破壊シミュレーション手法を開発した。また、繊維配向した薄膜に対して、異方性材料の弾性変形特性に及ぼす結晶粒数と薄膜寸法の影響を明らかにした。
5. 共鳴多光子イオン化法(REMPI)を用いて、高クヌッセン数流れで生起する非平衡現象を解明し、REMPIを用いた面−分子干渉実験装置の構築および流束強度分布計測のための有機発光分子の高秩序分子膜を開発した。
6. ミクロ構造を有する材料からなるマクロ構造体のミクロ/マクロ非弾性解析を合理的に行うため,均質化理論に基づく材料モデルの陰的積分法とコンシステント接線剛性の導出を行った。
7. 気体ウェーバー数O(1)の条件での近臨界混合表面液ジェットの微粒化特性を微小重力実験で調べた結果、超臨界状態を利用して薬剤機能を高めた微粉末薬の製造に利用するのに都合が良い特性
を備えていることがわかった。
8. 液単相および気液2相流中を動く屈曲型マイクロマシーンの挙動について、数値シミュレーションを行い、推力、推進効率とレイノルズ数の関係を明らかにした。
9. 引張速度や衝撃力が筋損傷に及ぼす影響を解明した。また筋マイクロ構造と損傷を考慮したモデルを定式化するとともに、筋マイクロ構造要素の力学試験システムを構築した。さらに骨マイクロ損傷を考慮したモデルを改良し、損傷とひずみ速度の影響を実験的に検討した。
10. 均質な非線形素子で構成されるネットワークシステムにおける同期の生成条件を導出した。またシリコン網膜を用いたオプティカルフローの局所計算方式を提案した。




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