平成15年度実績報告


研究拠点形成実績の概要

21世紀には,産業構造,社会構造に大きな変革をもたらす基盤技術として,ナノテクノロジーの発展が期待されている.これに応えるために,1) 基礎研究としてナノ機械科学(機械分野におけるナノ理工学)を推進し,2) 機械基盤技術としてナノ領域の加工・制御・計測・運動技術を融合して,体系的なマイクロナノメカトロニクスを構築し,3) さらに高度情報社会においてインフラストラクチャとなる三つのシステム(情報機械,情報知能化ロボット,生命情報医療)を提供できる研究拠点を形成する.本研究拠点では,研究発展段階を縦軸とし,専門分野別を横軸とするマトリックスの節点に,各事業推進者を配置するとともに,それぞれの段階ごと分野ごとに,サブリーダを配置したマトリックス構造の研究組織を構築し,下記の事業を実施した.

1) 第1ステージにおける基盤技術の目標サイズ 100-10nm に対応した分担者ごとの研究項目を選定し,機械科学からシステム化技術までの一貫した研究における研究者間の位置付け・役割を明確にして,拠点形成の基盤を構築した.
2) 若手研究者育成のためのプログラムとして,ティーチングアシスタント,リサーチアソシエート(合計25名)の採用による若手研究者の支援,ポスドクの採用(1名)・海外招聘研究員(1名)の採用による研究体制の強化,新展開プロジェクトの公募による研究支援(10件)などを推進し,これらに補助金の約半分を投入した.
3) マイクロ・ナノ構造体を作製するための集束イオンビーム試料作製装置を購入して,ナノ領域の加工,制御,計測,運動への利用技術を立ち上げた.
4) 名古屋大学東京フォーラム(平成15年12月17日)に参加し,本研究拠点の概要説明および5件のパネル展示を行った.
5) 平成16年3月9日に第1回シンポジウムを開催し,外国人3名の招待講演および4名のCOEメンバーによる講演と研究内容の展示を行った.参加者は158名(うち学外48名).
6) 本研究拠点のホームページ(http://coe.mech.nagoya-u.ac.jp)を立ち上げ,研究内容の公開に務めた.
7) 運営委員会を発足させ,各月ごとの定例連絡会を10回開催し,研究の進捗状況の管理運営に務めた.
8) 国際会議WGを設置して,平成16年10月31日から開催する国際ワークショップの準備を開始した.


研究拠点形成に係る具体的な成果

1)本事業に関連して、世界的な研究拠点に向けて改善・整備等されたこと
マイクロ・ナノメカトロ二クスに関連した基礎研究,基盤技術,システム化技術の三階層別を横軸とし,情報機械システム,情報知能化ロボットシステム,生命情報医療システムの三プロジェクトを縦軸とするマトリックス構造を組織して研究者の有機的連携を図った.若手研究者を育成するための競争的環境を実現し,国際化を目指してシンポジウムの開催および海外招聘研究員の採用を行った.

2) 研究等によって得られた新たな知見
<システム化技術>
1. 情報機械関連:ナノ分子膜と表面ナノ構造との相互作用に基づくトライボ表面として,機械的ナノテクスチャと化学的テクスチャを対象として,ナノテクスチャ形成,異方性表面流動計測,ナノ分子膜力学特性計測などの研究を重点的に推進した.その結果,磁気ディスク面上のナノ分子膜の保持/修復機能評価に関して,強制摺動減耗に対しては,修復不可能領域が存在することを発見した.また,分子レベルの液架橋の動的特性(剛性・減衰係数)の実測に成功し,設計上有用なデータを蓄積した.
2. 情報知能化ロボット関連:センサやアクチュエータを高集積化するための基盤技術として,サブμm精度の三次元微細加工,ナノ材料特性評価などに関する研究,および環境認識能力,作業能力を向上するために,多数のセンサ情報を自律分散的に処理するためのシステム制御に関する研究を推進した.その結果,情報知能化ロボットシステムに関して,学習アルゴリズムや受動性と能動性をハイブリッドした運動制御に関する新しい制御方法を考案した.また,マイクロ流動制御に関して基盤技術となる微小物体の固定手法を考案し,局所温度計測制御による固定特性を評価した.さらに,カーボン系ナノ材料の同時観察操作するための統合環境を考案し,その特性を評価した.
3. 生命情報医療関連:マイクロナノ3次元微細加工技術,ナノ流路の製作技術を重点的に研究した.その結果,細胞を用いないでDNAから蛋白を合成する化学ICチップの機能を拡張し,GFPなど汎用性の高いマーカ蛋白の合成を可能とした.さらに現在では,個人の体質に応じた薬を合成するテーラーメイド医療の基盤技術を構築しつつある.

<基盤技術>
1. フォトリソグラフィに依らずに,機械加工とエッチングの組み合わせにより,微細3次元加工を実現する新技術を提案した.この技術を基本として,ドラッグデリバリ用マイクロニードル加工への応用を図る.
2. Walking Drive方式の駆動方法を採用して超精密XYθテーブルの開発を行い,CCDカメラと画像処理による位置フィードバックによって,測定分解能に相当する20nm程度の位置決め分解能を達成した.
3. 先球加工した光ファイバーをプローブとする新規な動的剪断力測定法を開発し,サブnNオーダの高感度剪断力測定を実現した.これによりnmオーダ厚さの超薄膜状分子膜の剪断特性の計測が可能となった.
4. 磁気力と液滴の表面張力とを利用した磁性微粒子の搬送技術を新たに開発した.マイクロ生化学分析システムへの応用を図る.

<基礎研究:ナノ機械科学>
1. MEMSの主要な構成材料である薄膜の力学特性を評価するための新しい手法を開発した.これにより,X線回折手法を用いて種々の配向を有する多結晶薄膜,および多層膜中の内部応力の非破壊測定を可能にした.またこの手法を使用して100nmオーダーの膜厚の薄膜の破壊強度の測定を可能した.同時に多結晶薄膜および多孔体のモデル化による力学特性・破壊に関する数値解析手法を開発した.
2. ミクロ構造を有する材料に対するマルチスケール理論を開発し,その応用として一方向連続繊維強化複合材,および六角形ハニカムの微視的変形ならびに巨視的挙動を解析した.
3. 基板励振法により薄膜の残留応力の大きさを任意に制御できる手法を確立した.また,開発したナノチューブプローブ探針を利用して,トンネル電流効果による高アスペクト比ナノスケール加工法を確立した.
4. 衝撃負荷による,骨格筋組織内部の微細損傷発生と力学機能低下が互いに相関することを明らかにし,筋傷害基準に関する基礎的知見を得た.筋マイクロ構造要素用の力学試験システムの仕様,設計を検討した.
5. マイクロスケール振動子における熱弾性連成減衰に関して,熱弾性チモシェンコはり理論により微小振動子の共振尖鋭度を解析し,熱弾性型減衰特性に及ぼすアスペクト比や固有振動次数の影響など,従来の解析では示されなかった因子の影響を明らかにした.
6. 平均自由行程の大きい高クヌッセン数流れに共鳴多光子イオン化法(REMPI)を適用して強い非平衡現象を解明するとともに,有機発光分子の一分子膜を利用した流束強度分布計測のための実験装置を構築した.
7. 屈曲型マイクロマシンの水中推進特性について数値シミュレーションを行い,レイノルズ数の低下に伴い表面摩擦の著しい増加によって推進力は低下し,圧力抗力の増加によって動力が著しく増加することを明らかにした.
8. 微小重力環境と近臨界混合表面状態を利用した実験により,はじめて液糸の分断過程の詳細を調べることが可能になり,観察に基づいて液体の微粒化を引き起こすレーリー・テーラー不安定波の励起機構を解明するとともに新しい微粒化理論の考えを導いた.
9.ネットワークに通信遅れが含まれる場合と含まれない場合のそれぞれについて,多数の部分システムがネットワーク結合したときに同期現象が発生する条件を明らかにした.




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