拠点形成の目的・必要性


プログラムの概要 スライド

21世紀には,産業構造,社会構造に大きな変革をもたらす基盤技術として,ナノテクノロジーの発展が期待されている.これに応えるために,1) 基礎研究としてナノ機械科学(機械分野におけるナノ理工学)を推進し,2) 機械基盤技術としてナノ領域の加工・制御・計測・運動技術を融合して,体系的なマイクロナノメカトロニクスを構築し,3) さらに高度情報社会においてインフラストラクチャとなる三つのシステム(情報機械,情報知能化ロボット,生命情報医療)を提供できる研究拠点を形成する.


本拠点の特色、目的、必要性

世界に先駆けて設立したマイクロシステム工学専攻において実績のあるマイクロナノ領域のメカトロニクス技術を牽引力とし,さらに機械系専攻において培ってきたナノ機械科学と,加工・制御・計測・運動などの基盤技術を融合発展させて,事業推進担当者群を,基礎学問,基盤技術,システム化技術の三階層から成る研究階層別と,実績のある三つのシステム化技術(情報機械,情報知能化ロボット,生命情報医療)に対応した分野別(プロジェクト別)のマトリックス構造に組織化することによって,目的意識と社会的責任をもって,基礎学問からシステム化技術まで一貫して研究教育できる世界的拠点を形成する.これまで新機能の提案が優先されてきたマイクロナノメカトロニクスにおいては,ナノ機械科学は対症療法的に扱われてきたため,連携と体系化が遅れ,システム化技術において問題解決の役割を果たしてこなかった.マイクロナノメカトロニクスを実用レベルに高めるためには,ナノ機械科学を探求して,その成果をナノ領域の加工・制御・計測・運動と融合させて,具体的に応用展開するシステム化技術まで一貫した研究教育を行う拠点を構築することが急務である.


本拠点のユニークさ

1) ナノ機械科学からシステム化技術まで含めたナノテクノロジーを体系的に研究教育を行う類似の研究機関はない.

2) 研究の発展段階に応じた三階層別と,システム化技術に対応した三つの分野別(プロジェクト別)の二次元マトリクス組織の採用により,目的意識の高い一体的な組織を構築できる.

3) これまで大型プロジェクトによるシステム化技術の豊富な実績があり,これを継承発展させることにより,迅速にCOE組織を構築できる.

4) 研究期間を3ステージに区分して,ステージごとに外部評価を受け入れて,競争原理の機能する運営を行う.


本拠点の重要性・発展性

高度情報社会においては大容量・小形の記憶装置,高精細・高速の画像装置が不可欠であり,情報機械の加工組立や運動制御の寸法は,分子原子サイズに近づいている.また,最先端の医療バイオ技術においては,単一の細胞や蛋白質を単位として,その存在形態や変形移動を計測し,合成分析用のデバイスを操作する機械技術が必要とされる.さらに,人間と共存協調できる情報知能化ロボットの開発には,大規模センサ群や精密小型デバイスの集積技術が不可欠である.このような分野における共通的な機械的要求条件は,マイクロナノ領域の気体・液体・固体間の微細な相対運動を,実用レベルで実現することである.本技術は,ナノテクノロジーと密接に関連し,マイクロナノメカトロニクスが主導して,その研究成果を最も有効に活用できる分野である.またこれらの分野は,高度情報社会のインフラストラクチャと位置付けられ,新産業を興隆させ,新雇用を創出するとともに,少子高齢化が急速に進展する人間社会に,より快適な生活環境を提供するものである.


教育実施計画

1) 若手へのシームレスな研究支援システムの構築:ドクターコース学生のRA雇用,ポスドク雇用を拡充し,若手研究者から構成される研究グループの形成を奨励して,競争的研究環境を醸成する.

2) 国際的教育環境システムの構築:大学院学生を国際会議で積極的に発表させて国際性を涵養するとともに,短期派遣制度を定着させる.

3) 社会との連携による実践的教育環境システムの構築:若手研究者の独創的なアイデアには,学内外の支援を優先的に活用して事業化を促進する.

4) 創造性育成システムの構築:新展開が有望なテーマを設定して,学生にアイデアを応募させ,優秀なアイデアには研究費を補助して研究を実施させるとともに,成果を評価する.

5) 流動型キャリアアップシステムの構築:社会人を積極的に受け入れ,キャリアアップした高度職業人を育成する.

6) マイクロシステム工学専攻および機械系専攻の再編成:平成16年度概算要求計画において,大専攻・大講座制に移行し,本拠点の形成に対応したマイクロシステム工学専攻および機械系専攻の再編成を行う.


事業終了5年後に期待される研究・教育成果

1) ナノ領域における基礎分野から,システム化技術まで一貫した研究教育を特色とするマイクロナノメカトロニクスの研究拠点を形成できる.

2) 二次元マトリックス構造の組織運営によって,目的意識をもち社会的責任を自覚して,研究と教育に従事できる.また,システム化技術を経験することによって,異分野との連携を深め,産官学の連携強化により,産業界で即戦力となる人材を供給できる.

3) ナノ領域における相対運動を安定かつ高信頼に実現できる技術により,情報記録,ナノマニピュレーション,微細加工,ナノ位置決め,ナノバイオ操作などの機能と性能を飛躍的に向上できる.


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